著書名 |
単著、 共著の別 |
出版年月 |
発行所・発表雑誌等 |
概要 |
「Derived Structure of the French Causative Constructions」 |
単著 |
1981年 1月 |
Linguistics and Philology 第2号 |
フランス語の使役構文の派生構造を、変形生成文法の拡大標準理論の枠組みで論じたもの。フランス語には使役動詞-NP-不定詞と、使役動詞-不定詞-NPという2種類の使役構文がある。まず、この2つは類似の基底構造から派生されることを示した。次に後者は複合過去の構造に類似していることを示す証拠を提示した。(P79~P104) |
「チョムスキー理論とフランス語学」 |
単著 |
1982年 3月 |
日本フランス語フランス文学会中部支部研究報告集第6号 |
変形生成文法、とりわけチョムスキーによる原理と変数のアプローチが、フランス語の構文分析にどのような貢献を成し得るかについて論じた。(P25~P31) |
「現代フランス語の主語倒置-その構造と機能-」 |
単著 |
1982年 5月 |
フランス語学研究第16号 |
GB理論に基づいて現代フランス語の主語倒置構文を分析した。主語はVPの右側への付加であり、それが可能な構造上の条件は、Sから何らかの要素が抜き出され、COMPの位置を占めていることであるという根拠を示した。そして、それ以外の制約は倒置主語の機能に由来するものであると論じた。(P29~P38) |
「Wh-Pronoun/Complementizer Alternation in the COMP Position of Restrictive Relative Clauses」 |
単著 |
1984年 2月 |
Linguistics and Philology 第4号 |
英語、フランス語、イタリア語の時制付き関係節と不定詞関係節の対照研究。これらの先頭に現れるthat、que、cheは補文標識であることを示した後、それがWh句とどの様な理由により交代するのかを束縛原理、代名詞回避の原理によって説明した。(P118~P151) |
「Double Subject Positions Hypothesis」 |
単著 |
1986年 2月 |
Linguistics and Philology 第6号 |
英語とイタリア語の主語倒置文に関する対照研究。イタリア語の倒置主語は一般に主張されているように通常の主語位置に生成されて右に移動することで派生されるのではなく、最初から右側に生成されるという仮説を提出した。この仮説は、理論的に不都合がないだけでなく、英語との対照において望ましい説明を与えることができる。英語ではイタリア語のような構文が許されず、必ず非人称主語thereが必要なのは、英語には格付与に隣接条件があるためであると論じた。(P251~P271) |
「現代フランス語におけるque → qui変換規則の存在とその存在理由」 |
単著 |
1986年 6月 |
日本福祉大学研究紀要 第68号 |
他のロマンス諸語とは異なり、何故フランス語には関係節においてqueとquiの交代があるのかについて論じた。それはフランス語のみが「主格が音型を持った形態で実現されなければならない。」という条件を持っているからであると主張し、フランス語のみが接辞主語を持つという事実との関連を指摘した。また、英語の関係節におけるthatの削除可能性との関係も論じた。(P277~P295) |
「英語学力到達度の要因分析」 |
共著 |
1988年 3月 |
東海産業短期大学紀要 第2号 |
東海産業短期大学の英語科全学生100名を対象にして英語学力到達度の調査を行い、それが他の教科の成績との関連を分析した。さらに、入学形態や居住地といった学力以外の要因と関係があるかについても統計的に分析した。(P9~P23)石上文正、丹羽卓、神田和幸 |
「核心文法から周辺へ-非人称倒置の場合-」 |
単著 |
1989年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第30号 |
非対格動詞は非人称倒置構文をつくる中心的動詞であるが、他の自動詞も適切な文脈にさえ置けば、その構文を作ることができる。この事実を説明するために、「核心と周辺」という考え方を採用し、非対格動詞がこの構文の核心を形成し、無標である(つまり文脈に依存しない。)のに対して、その他の自動詞はその使用される意味が、非対格動詞の持つ意味から遠ざかるにつれて有標性を増大させる(つまり文脈への依存が大きくなる。)ことを示した。(P89~P112) |
「現代フランス語における過去分詞の一致の統一的分析」 |
単著 |
1991年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第32号 |
伝統文法では、フランス語の過去分詞の一致を統一的に記述する事は困難であった。ところが、変形生成文法の能格(非対格)仮説を採用すればそれがうまく記述できるばかりか、指定辞-主要部一致というより一般的な現象に還元できることを示した。さらに、方言差についても説明を試みた。(P137~P162) |
「Impersonal Passive Constructions in English and French」 |
単著 |
1992年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第33号 |
非人称受動文に関する、英仏語の対照研究。英語ではthere-be-NP-過去分詞という語順になるのに、フランス語ではil-être-過去分詞-NPという語順になるのかについて、原理とパラメーターいう考え方に基づき説明し、その差違が非人称主語の差違に起因すると論じた。(P67~P86) |
「言語の社会性について-ホイットニーからソシュールへ-」 |
単著 |
1995年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第36号 |
言語の社会性についてホイットニー、メイエ、ソシュールがどの様な考えを持っており、いかなる点において異なるのかについて論じた。特に前2者とソシュールの決定的な相違はソシュールが言語の存在を社会でなく個人の頭脳の中に置いたという点であり、それをチョムスキーの考えから再解釈した。(P165~P189) |
「Locative Inversion and Case Assignment to Inverted Subjects」 |
単著 |
1996年10月 |
『言語の深層を探ねて(中野弘三博士還暦記念論文集)』(英潮社)所収 |
場所倒置文の倒置主語にどの様にして格を付与するかは、解決の難しい問題であった。変形性成文法の極小理論に基づき分析を行い、倒置主語に付与されるのは一般的に考えられているような主格ではなく、絶対格であると主張した。これによって、場所倒置文において観察される様々な現象がうまく説明できることを示した。(P214~P236) |
「ケベックの「言語戦争」-1996年夏-」 |
単著 |
1997年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第38号 |
1995年のケベック州州民投票の余波として、1996年モントリオールを中心として英語系の英語の権利拡張運動が起こった。その中心人物であるHoward Galganovの主張およびケベックの様々な主張を検討し、その運動の意味が何であるかを分析した。(P237~P266) |
「ケベック州フランス語憲章制定20周年」 |
単著 |
1998年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第39号 |
ケベック州の重大な転換点となるフランス語憲章の制定の意味を確認し、その後20年が経過して状況がどのように変化したかを観察して、ケベック社会におけるこの憲章の意義を検証した。(P257~P274) |
「カナダ連邦のバイリンガリズム」 |
単著 |
2000年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第41号 |
カナダが連邦国家としてどのような経緯でバイリンガリズムを国家の基本方針として採用したかの経緯を概観した後、各州がとる様々な言語政策、とりわけケベック州がとる言語政策を検証して、連邦のバイリンガリズムと各州のモノリンガリズムの対比を行い、今後の問題を指摘した。(P219~234) |
「ベルギー-言語対立を乗り越えようとする国-」 |
単著 |
2001年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第42号 |
ベルギーの言語問題の歴史的背景を整理し、それをベルギーという国家がどのようにして乗り越えようとしてきたかを概説した。そのうえで、現在のフランデレン地方、ワロン地方、そして首都ブリュッセルそれぞれが抱える言語問題が何かを検証した。(P223~P236) |
「ケベックの新しいアイデンティティに向けて」 |
単著 |
2003年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第44号 |
カナダケベック州の人々が持つ「ケベコワ」というアイデンティティが歴史の中でどのように形成されてきたかを確認した後、現代ケベックにおいてそれ再解釈され、新しい姿をとりつつあることを検証した。フランス系という血筋に基づくアイデンティティからフランス語というマイノリティや移民にも受け入れやすい言語に基づくアイデンティティへと移行することによって、ケベックは寛大なナショナリズムを獲得しようと努めている。その可能性と課題について論じた。(P235~P252) |
「ラローズ報告にみるケベックの言語文化的状況と未来への志向」 |
単著 |
2004年 3月 |
金城学院大学論集(英米文学編)第45号 |
la Commission des États généraux sur la situation et l’avenir de la langue françaiseが2001年に発表したラローズ報告とそれに対するメディアの論評を分析することによって、現代ケベック社会がどのような言語文化的状況にあるか、またそこに住む人々がどのような意識をもっているかを明らかにした。フランスを唯一の絆として、民族的対立を乗り越え、ケベコワという新しい民族を生み出そうという意思が明白に存在する一方で、それへの異論や困難がなお立ちふさがっている様子がそこに見て取れる。(P159~P185) |
「Québécois Nation Motionをめぐる言説とその意味」 |
単著 |
2008年 9月 |
『金城学院大学論集』人文科学編第5巻第1号 |
2006年11月にカナダ下院でQuébécois Nation Motionが圧倒的多数で可決された。その経緯と政治的意味、そしてカナダおよびケベック州でどのような反応を引き起こしたかを、下院の議事録、英語系およびフランス語系新聞の報道やそこで展開された議論を分析することで明らかにした。(P51~P61) |
「ケベック・ネイションとは何か:様々な統合モデルと課題」 |
単著 |
2008年 9月 |
『カナダ研究年報』第28号 |
カナダのケベックではネイションをめぐる議論が絶え間なく続いている。それが歴史的にどのような変遷を辿ったのか、またその社会的背景は何かを概観した後、現在の主要なケベック・ネイションのモデルを検証し、今後ケベックがどのような方向に向かうべきかを論証した。(P19~P36) |
「マルチナショナリズムとケベックのネイション化に占めるフランス語の中心的地位」 |
単著 |
2013年 9月 |
『ケベック研究』第5号 |
1960年代以降、ケベックの人々がどのような経緯でケベコワというネイション意識を獲得するに至ったのかを検証することを通して、その過程でフランス語こそが中心的役割を果たしたことを明らかにした。そして、ケベックで構想されているマルチナショナルなカナダを構築するには、フランス語にどのような地位を与えるべきかについて論じた。(P65-P82) |
「なぜケベックとケベック外のカナダはわかり合えないのか?――言語観とアイデンティティを巡る対立――」 |
単著 |
2014年10月 |
『カナダ研究年報』 第34号 |
カナダのその中のケベック、両者がなぜ理解しあえないのかについて、言語とアイデンティティという観点から論じた。ケベック人にとってフランス語がアイデンティティの中核であるのに対して、ケベック外のカナダ人にとって英語はアイデンティティと深くかかわらない。北米という英語の大海の中でフランス語を死守しようとするケベック人を、世界最強の言語である英語を話す人々は理解できない。こうした言語観の相違とそれに基づくアイデンティティの違いが、ケベックとそれ以外のカナダの相互理解を困難にしていることを論証した。(P19~P36) |
「ケベコワの多くは本当にラシストなのか?―-間文化主義の現在を問う――」 |
単著 |
2014年11月 |
『ケベック研究』特別号 小畑精和先生追悼論集 |
2007年1月14日のモントリオール新聞の記事「59%のケベコワが自分をラシストだと思っている」に端を発する論争の分析を通して、これ大騒動になったのは間文化主義によって移民の社会統合が順調に進んでいると信じていたケベックの知識人の反発を呼んだからだという点をまず明らかにした。次にこの調査結果は、彼らが信じているように悲観的なものではなく、むしろ多くのケベコワが自らをラシストかも知れないと自覚している点を積極的に評価すべきで、それは間文化主義政策の成果だと論じた。(P124~P137) |
「ケベックとフランデレンの社会統合政策―二つのネイションの比較研究―」 |
単著 |
2016年 3月 |
『金城学院大学論集(人文科学編)』第12巻第2号 |
カナダのケベックとベルギーのフランデレンには、多数の類似点がある。移民(あるいは外国人労働者)をどのように社会に統合するかという点でも同じ課題を抱えるが、差別や外国人嫌いという点で、フランデレンの方が遅れをとっているととがわかる。その原因が何かを両者の社会統合政策とその背景の歴史を比較することで明らかにした。(P57~P71) |
「ケベックの社会統合政策の進展」 |
単著 |
2016年 9月 |
『ケベック研究』第8号 |
1980年代以降現在までのケベックの社会統合政策を、政府文書や委員会答申などにあたりながら整理した。その結果、それはフランス型共和主義とアングロ=サクソン型自由主義の間を揺れ動きつつ、ケベック独自の間文化主義という統合理念を形成するに至ったことを明らかにした。(P44~P63) |
「What is English Canada?: Reflection from the Point of View of Language and Identity」 |
単著 |
2017年10月 |
『金城学院大学論集(人文科学編)』 第14巻1号 |
カナダ研究において、しばしば「ケベック対英語系カナダ」という図式で語られることがある。ケベックというのはケベック州という地理的領域において社会構成的文化を持つ実態を持つが、英語系カナダはどうなのかを言語とアイデンティティの点ら検証した。それにより、英語系カナダというのはケベックと対峙するときのみ現れる仮の実体であって、それが今日つに持つ確固とした基盤はないということを論証した。(P49~P55) |
「ケベックの「開かれたライシテ」――自由主義と共和主義の狭間で」 |
単著 |
2017年12月 |
『金城学院大学キリスト教文化研究所紀要』第21号別冊 |
カナダのケベックにおいて主張されている「開かれたライシテ」という理念について、ケベックでここ10数年で起こった具体的な事例に照らして考察した。21世紀初頭に起こった3つの出来事(「妥当なる調整」騒動、ブシャール=テイラー報告、ケベック価値憲章)を通して、「開かれたライシテ」がフランス型共和主義のライシテとカナダの自由主義的個人主義の間でどのように揺れ動いているのかを検証し、現政権の問題点を指摘した。(P. 45~P. 62) |
"Évolution chronologique de l'attitude du Québec envers ses minorités ethnoculturelles" |
単著 |
2018年10月 |
金城学院大学論集(人文科学編)第15巻1号 |
ケベック州が移民受け入れにあたって採用してきた政策を、1960年中ごろから現在に至るまでたどることによって、ケベックの人々が移民におよびその子孫に対してどのような態度をとり、それがどう変化してきたかを探った。(P. 47~P. 60) |
「カナダとケベックにおけるライシテ」 |
単著 |
2019年 9月 |
金城学院大学論集(人文科学編)第16巻1号 |
カナダのケベック州ではライシテをめぐって社会を2分するような激しい議論が戦わされている。それに対してそれ以外のカナダではそれほどではなく、ケベックに対する批判的意見も見られる。しかし、そうした状況を最近の出来事を通して詳しく見て、実は両者は外見ほど異なっているわけではなく、通底する課題を持っていることを明らかにした。(P. 83~P. 94) |
題目/演目名等 |
発表年月 |
発表学会名等 |
概要 |
「チョムスキー理論の目標と方法」 |
1981年 5月 |
日本フランス語フランス文学会中部支部昭和56年度大会 |
学術論文「チョムスキー理論とフランス語学」と同じ内容 |
「現代フランス語の主語倒置-生成変形モデルに基づく考察-」 |
1981年10月 |
日本フランス語学研究会第41回例会 |
フランス語の2種類の主語倒置文、非人称倒置文と文体的倒置文を比較対照して、その相違点を明らかにし、それが両者の派生構造の違いに還元できることを示した。 |
「Post-Verbal Subject, Nominative Case and Verbal Agreement」 |
1982年11月 |
Formal Linguistics Circle第2回研究発表会 |
英語とフランス語の主語倒置構文では通常の主格付与の方法では格は付与できない。そこで、ここでは構造による格付与ではなく、主語と動詞の一致による格付与の可能性について論じた。 |
「2つの主語倒置文-Sujet post-verbalの特異性について-」 |
1982年12月 |
日本フランス語学研究会第51回例会 |
現代フランス語の2種類の主語倒置文(非人称倒置構文と文体的倒置構文)の共通点と相違点を記述し、前者が能格構造から派生されるのに対して、後者は主語が後置されることによって派生されることを示した。 |
「A連鎖条件と非人称主語」 |
1989年11月 |
日本英語学会第7回大会 |
フランス語の過去分詞の一致を根拠として、英仏語の受動文の派生では、NPは目的語の位置から主語の位置まで指定辞の位置を循環的に繰り上がると主張した。またそれに対応する非人称受動文の派生を検討し、英仏語の相違を明らかにした。 |
英語リメディアル教育用e-Learning教材“Kチャレンジ”の開発と試行 |
2010年 8月 |
2010 PC conference |
大学入学後も英語の文法基礎力の不足している学生を対象としたe-Learning教材を開発し、それを紹介した。「いつでも、どこでも」学習できるように携帯電話で動画を見ながら学べるようにしたのが特徴である。これを学生に試行的に利用させ、その意見を調査し、それを発表した。上手く利用できた学生の反応は良好だったが、学生のIT知識の不足が利用の妨げになったこことも、発表で指摘した。工藤多恵、中田平、丹羽卓 |
「マルチナショナリズムとケベックのネイション化に占めるフランス語の中心的地位」 |
2012年10月 |
日本ケベック学会 2012年度全国大会 |
ケベックを一つのネイションとして構築しているために持つフランス語の持つ意味とは何か。マルチナショナリズムという構想を実現するためには、それをどのような形でケベックの基本法に組み込むのが望ましいのか。そうした問題意識に立って、ケベックのこれまでの歩みと、今後取るべき道について考察した。 |
「カナダとケベック:言語とアイデンティティを巡る対立」 |
2013年 9月 |
日本カナダ学会第 38 回年次研究大会 |
カナダのその中のケベック、両者がなぜ理解しあえないのかについて、言語とアイデンティティという観点から論じた。ケベックがフランス語を中心とした一つのネイションを構築しようとしているのに対して、カナダは二言語多文化主義という国家理念に立って、国内に特別な立場の集団を認めない。その意味でこれは二つのナショナリズムの対立であり、解決の最善の道はマルチナショナリズムにあると主張した。 |
「ケベコワの多くは本当にラシストなのか?―間文化主義の現在を問う」 |
2014年10月 |
日本ケベック学会2014年度全国大会 |
2007年1月14日のモントリオール新聞の記事「59%のケベコワが自分をラシストだと思っている」に端を発する論争の分析を通して、これ大騒動になったのは間文化主義によって移民の社会統合が順調に進んでいると信じていたケベックの知識人の反発を呼んだからだという点をまず明らかにした。次にこの調査結果は、彼らが信じているように悲観的なものではなく、むしろ多くのケベコワが自らをラシストかも知れないと自覚している点を積極的に評価すべきで、それは間文化主義政策の成果だと論じた。 |
"Évolution chronologique de l'attitude du Québec envers ses minorités ethnoculturelles" |
2015年10月 |
Association coréenne des études québécoises (韓国ケベック学会) |
カナダのケベック州の移民およびその子孫に対する態度の変遷を、政府文書などの公文書を手掛かりにして明らかにした。1960年代の急激な産業化により多数の移民を受け入れたわけだが、以降現在まで一貫して移民への態度は肯定的であるが、当初はフランス系カナダ文化への統合を求めていたが、徐々により抽象的な「公共共通文化」への統合へと変わり、さらに20世紀末にはシチズンシップの枠組みへの統合を計ろうとした。しかし、21世紀になりその修正を迫られている。 |
「カナダとケベックにおける脱宗教――相違か収斂か」 |
2017年 9月 |
日本カナダ学会第 42 回年次研究大会(於 国立民族博物館) |
ライシテ(脱宗教)という観点から、ケベックとそれ以外のカナダを比較した。ケベックではこの10年ほどライシテを巡る議論が社会全体でなされているのに対して、それ以外のカナダではほとんど問題にされることがない。しかし、実際にはそこでもケベックに似たライシテを巡る事件が起こっており、ただそれが社会全体の問題とされていないだけだということを指摘し、なぜケベックでそれが大きな問題になっているのかを明らかにした。そして、ケベックがこの点で先行してはいるが、それ以外のカナダもまた同じ問題に直面する可能性を指摘した。 |
「ナショナルな神話と集合的想像域」 |
2018年10月 |
日本ケベック学会2018年度全国大会 |
Gérard Bouchardの『Raison et déraison du mythe』(2014)で提示されたMythe nationalとimaginaire collectifという概念について、同著に示された事例を検証しながら、他の事例もとりあげてわかり易く解説した。 |
著書名 |
単著、 共著の別 |
出版年月 |
発行所・発表雑誌等 |
概要 |
ジェラール・ブシャール著『ケベックの生成と「新世界」』 |
共著 |
2007年 4月 |
彩流社 |
G. Bouchard 『Genèse des nations et cultures du Nouveau Monde』, Boréal, 2000.の共同監修及び第3章「新しくて古い?ケベック文化とネイションの形成およびその変容」の単独訳。共同監修者 竹中豊、丹羽卓、共訳者 立花英裕、丹羽卓、柴田道子、北原ルミ、古地順一郎(P1~P5、P89~P206)。また、「監修者あとがき」(P477~P486)により解説を執筆。総頁数571頁。 |
アラン・ガニョン&ラファエル・イアコヴィノ著『マルチナショナリズム:ケベックとカナダ・連邦制・シティズンシップ』 |
共著 |
2012年 3月 |
彩流社 |
A.-G. Gagnon & R. Iacovino 『Federalism, Citizenship, and Quebec: Debating Maltinationalism』, University of Tronto press, 2007の監修及び第1章「マルチナショナリズムの探求」第2章「歴史的基盤と憲法秩序の発展――ケベックにおける異議申し立ての政治」の監修、解説および翻訳。翻訳担当箇所は第1章及び第2章。共訳者 古地順一郎、柳原克行。総頁数418頁。 |
アラン・ガニョン著『マルチナショナル連邦制』 |
単著 |
2015年 3月 |
彩流社 |
Alain-G. Gagnon, L'Âge des incertitudes : essais sur le fédéralisme et la diversité nationale, Québec, Les Presses de l'Université Laval, 2011の翻訳と解説。 |
ジェラール・ブシャール著『間文化主義―多文化共生の新しい可能性』 |
共著 |
2017年12月 |
彩流社 |
Gérard Bouchard, L’interculturalisme. Un point de vue québécois, Montréal, Éd. Le Boréal, 2012, 248 pagesの翻訳。この翻訳全体の監修を務め、英語版に付加されたチャールズ・テイラーの前書きと著者自身の後書きの翻訳を担当した。また、解説を執筆した。(翻訳者全6名) |
著書名 |
単著、 共著の別 |
出版年月 |
発行所・発表雑誌等 |
概要 |
ジャン=ブノワ・ナドー&ジュリー・バーロウ著(立花英裕監修、中尾ゆかり訳)『フランス語のはなし―もうひとつの国際共通語』、大修館書店、2008年 |
単著 |
2010年 9月 |
『ケベック研究』第2号 |
『フランス語のはなし―もうひとつの国際共通語』は、英仏バイリンガルのカナダ人によって書かれたことにおおきな特徴がある。従来のフランス中心のフランス語史ではなく、フランコフォニーという視点からフランス語について論じるのは、まさに現代的な意味を持つことを指摘した。(P91~P95) |
ジェラール・ブシャール、チャールズ・テイラー(編)『多文化社会ケベックの挑戦』(竹中豊、飯笹佐代子、矢頭典枝訳)明石書店、2011 年 |
単著 |
2012年 9月 |
『ケベック研究』第4号 |
カナダのケベック州政府が設置した「妥当なる調整」に関する委員会の報告書の要約版の翻訳書である本書の要点を紹介するのと併せて、その価値を明らかにするのと同時に、それがケベック社会でどう受け止められているかという観点から、その問題点を指摘した。(P.37~P141) |
竹中豊著『ケベックとカナダ』、彩流社、2014年 |
単著 |
2014年 9月 |
『ケベック研究』第6号 |
ケベックとカナダの研究に長年携わってきた著者の最近10年間の研究の集大成であり、地域研究の一つのモデルであると評した。ひとつの狭い領域に閉じこもることなく、幅広い教養に裏打ちされた研究は、後進の研究者にとっての指針となると評価した。(P140~P145) |
フェルナン・デュモン著、伊達聖伸訳、『記憶の未来:伝統の解体と再生』,白水社、2016年 |
単著 |
2017年 9月 |
『ケベック研究』第9号 |
フェルナン・デュモンの『記憶の未来:伝統の解体と再生』にセルジュ・カンタンが序文を付けたものを翻訳し、それに役者が詳細な解説を付けた書物の書評。20世紀後半のケベックの最も重要な思想家のひとりであるデュモンの最晩年の書物の価値を説明し、カンタンの長文の序文と訳者の解説の持つ意味を明らかにした。特に訳者解説が日本でのケベック研究に非常に有用であると述べた。(P.143~P.146) |
Sylvain DETEY, Jacques DURAND, Bernard LAKS , Chantal LYCHE 編著(川口裕司、矢頭典枝、秋廣尚恵、 杉山香織編訳)『フランコフォンの世界 コーパスが明かすフランス語の多様性』、三省堂、2019 年 |
単著 |
2019年 7月 |
日本カナダ学会『ニューズレター』第113号 |
世界のフランス語の様々な変種をデータに基づいて記述した書物の書評。まず本書がカナダ研究に資することの意義を2点(1点目はフランス語教育にかかわること、2点目はアイデンティティにかかわること)指摘した。次いで、内容を紹介しつつ、いくつかの疑問点・問題点を論じた。特に、各地の生のフランス語データを大量に収録していることと、言語学の知識を前提としているが、それに関する説明が不十分であるなど、専門家以外の読者への配慮が不足している点を取りあげた。 |
ルース・アヴィ著、梅川佳子訳『チャールズ・テイラーの思想』の書評 |
単著 |
2020年 9月 |
『カナダ研究年報』第40号 |
タイトルの邦訳書について、言語学を専攻した者の視点から論評を加えた。内容としてはとてもよくまとまった概説書であるが、原書の出版が2000年であるため、テイラーの壮年期までしか描かれていない点に注意が必要であることと、テイラーが言語を非常に重視しているにもかかわらず、原書が重要な関連のある言語学の研究業績を無視していることに疑問を呈した。(P41-p45) |